貴方は青い空に浮かぶ綺麗な綺麗な真昼の月。





+貴方の光、真昼の月





まどろみの中貴方の夢を見た。

真っ白な世界の中で、誰よりも綺麗な貴方が俺に微笑みかける。

誰にも捕まえられないのだと、誰にも掴まることがないのだと思った貴方が。

たった一人俺だけのところに降りてくる。

奇跡、だと。

思わずにはいられない。

人生で初めて手に入れたいと強く願った貴方が。

こうして俺だけに微笑みかけてくれる、幸せ。


誰よりも綺麗な貴方が、俺だけに与えてくれる、愛情。









「・・若」


自分の名を呼ぶ現実感に帯びた声に、俺はゆっくりと瞼を開ける。

するとそこにはつい今しがたまで夢の中で思い描いた人がいた。

少しだけ微笑みを浮かべた彼は、

フローリングに横たわっている俺の顔を覗き込むように問い掛ける。


「気持ちよくて寝ちゃった・・?ここ、暖かいもんね」


丁度俺の上にいる佐伯をまだ覚醒しきらない目で見つめる。


元から。

誰よりも綺麗で多くの人の目を引く容貌をしているのだけれども。

日の当たるリビングの中。

色素の薄い髪の毛が太陽の柔らかい日差しに当たり、キラキラと輝いて見えて。

そうして幸せそうに笑う貴方は、とてもとても。


綺麗だった。


無意識のうちに手が伸びて、その綺麗な髪の毛に触れる。

手の内でその柔らかくさらりとした髪の毛を弄んでいると、彼はくすぐったそうに笑う。


「寝ぼけてる?」


「寝ぼけてなんてない」


くすぐったそうに――でも光の中で酷く幸せそうに笑う佐伯に手を伸ばし、

腰を引き寄せて自分の上に乗せた。

突然の行動にけれども抵抗することなく、佐伯は自分の上に倒れこんでくる。


「綺麗だ」


そう言って頬に手を寄せる。

愛しさに指先が震えて、けれどもその手を離すことなどできない。


「目、悪いんじゃないの?」


そう言いながら彼は、ゆっくりと瞼を閉じた。

手にした喜びを噛み締めるのはこんなときだ。

まるで空に浮かぶ月のように誰よりも綺麗な貴方が、たった一人俺だけに全てを許してくれる。

孤高に輝く貴方をこの腕の中に掴まえることができたのは、自分だけなのだと。

優越感にも似た愛しさが胸の中を焼き尽くす。


「悪くなんてない」


そういい返すと、佐伯は悪戯のような軽いキスを仕掛けてきた。

ちゅ、と僅かに音を立てて離れていくそれに名残惜しさを感じて、

逃がさないというように後頭部を引き寄せ、更に深いキスを味わう。

開け放たれたフローリング、光の差し込む部屋の中で二人。


言葉にならない愛情を交わす。


呼吸が苦しくなったのだろう佐伯が、空気を求めて離れていくのを名残惜しい視線で眺める。

開いた唇が色香に満ちて、俺を誘う。

再び引き寄せようとして手を伸ばすけれども、

日吉が掴まえる前に佐伯が頬に一つ軽いキスを落とす。


「俺は、」


俺は驚いて思わず目を瞠って佐伯を見る。



「お前のそういうとこが、

 
 好きだよ」



そう言って彼は他の誰よりも綺麗で美しい笑顔を浮かべた。

俺はそんな佐伯を今度こそ腕の中に掴まえて引き寄せる。

誰にも渡すつもりなどない。

誰よりも。

誰よりも誰よりも。

愛しているのは、俺だ。

貴方は黙って俺の腕の中に捕らわれてくれるけれども、

もう一生この腕の中から逃すことのできないくらい、

貴方を、



「愛してる」



そうして俺たちは再び愛の言葉に似たキスを交わす。





佐伯の後ろ、窓の向こうには青空にぽっかりと、真っ白い月が浮かんでいた。