部員たちが皆肝試しに出かけたという情報を聞きつけ、けしからんと怒り出したのはいつものこと。

考える暇もなく家を飛び出す真田の後ろを追いかける。

真田の傍若無人ぶりはいつものことだけれども、それを嫌だと思ったことは一度もない。

もう随分と馴染んでしまっている自分に苦笑しながら、その背中を追った。





+肝試し〜ver真柳〜





着いたのは、地元から少し離れた山奥の、ここら辺では有名な『出る』場所だ。

二人で電車に乗ってやってきたそこは、夏という季節柄、

好奇心旺盛な人々がたくさん集っているのかとおもいきや、

本当に出るという信憑性からか冷やかしまがいの人々は全くいなかった。



「ここにあいつらがいるのか・・」



真田は溜息を零さんばかりの声で目の前の建物を眺める。



「そうだ、でもあいつらも元気だな」



夏休みなのだからもちろん毎日といっていいほど練習はあり、明日ももちろん朝早くから練習がある。

しかし彼らはそんな疲れをものともせず、こうして遊び歩いてみせるのだ。

その若さに感心せざるをえなく、そして柳は自分の思考が段々と真田に似てきていることに気づいて、

少しだけ苦笑いを零した。

自分がこんなところまで影響を受けていることに驚くとともに、深みに嵌っているなと気づかされるのである。



「中に入るぞ」



真田はそう息巻いて、建物の中に入ろうとする。



「真田」



そんな真田を柳は慌てて留めた。



「何だ、怖いのか?」


「いや、怖いとかそういう問題ではなく・・」



真田は幽霊というものが全く見えない。

その方が幸せだともいえるかもしれないが、真田の場合は少々厄介だ。

真田は何も見えない。

けれどその中でも幽霊に好かれる人と好かれない人という人間がいるのだ。

真田は後者にあたるのだ。

何も見えないけれども、何故かそういう類を引き寄せてしまう。

古風なその相貌が引き寄せるのか、真っ直ぐな精神を霊が好むのかは知らない。

けれど真田は知らず知らずのうちに引き寄せてしまうのだ。



「もし俺たちが今入ってすれ違いになってしまったら元も子もないだろう?」



とりあえず真田には真実を告げず、当り障りもないことを言う。



「ふむ・・それもそうだな」



簡単に納得をしてくれた真田にほっと安堵の息を吐く。

真田は柳に大きな信頼をおいてくれていて、だからこそこんな会話が成り立つのだ。



「・・しかし・・中にいるあいつらは大丈夫だろうか」


「ああ、それは大丈夫だ」



柳は大きく頷く。



「何故そう言い切れる?

 もしかしたらここは幽霊が出る場所ではないのか?」


「いや、それはない。

 ここは本当に”出る”場所だ。

 それは間違いない」



何を隠そう、柳は”見える”タイプの人間だ。

だからこそここはそれなりに強い力を持った霊がいることが分かる。

もちろん、何も知識もない好奇心のみでここに入り込もうとする奴らはそれなりに危ない目にあってしまう。



不思議そうに尋ねる真田に、柳は少しだけ種明かしをしてみせる。



「幸村と仁王はそういう類のものが”見える”奴らだからな。

 強い力を持っているあいつらに無闇に近寄ろうという奴らはいない。

 それに、赤也とジャッカルは何も見えない上に、あいつらは霊から嫌われるタイプだ。

 あまりに元気すぎて近寄れないのだろう。

 危ないのは丸井と柳生なのだが・・まぁあの二人は幸村と仁王が離さないだろうからな」



だから大丈夫なんだ、と告げると。

不意に。

真田の腕がするりと柳の体を抱き締めた。



「・・真田?」



突然のことに驚いて声を上げると、真田は更に柳の体を強く抱き締めた。



「お前は俺が守る。

 絶対にだ」



どくん、と鼓動が一つ跳ねる。

きっとこの件に関しては真田よりも柳の方が役に立つのだろうけれども。

それでもしっかりと柳を守ろうとしてくれている。

その姿は昔からずっと変わらない。

強い背中はいつでも柳を守ってくれている。



「・・そうだな。

 守ってもらおうか」



たまには、甘えてみるのもいい。

柳はそう思いながら、ぎゅっと真田を抱き返したのだった。





夏の夜の小さな思い出。