キス、という言葉で表すのは躊躇われるほど彼は、

日常的・恒常的にワタシの
に触れてくるのです。





+kisses show your love+





彼はいつでもどこでもワタシに触れたがります。

それは時も場所も構わず、二人でいるときにはいつもワタシに触れたがるのです。

一度何故なのか理由を聞いたことがあります。

他人に触れたがるのは淋しいからなのだとどこかの本で読んだことがあったので、

そうなのかと仁王君に尋ねたところ、彼にこれでもかと思いきり笑われてしまいました。

ワタシが怪訝そうな顔で仁王君を見れば、仁王君はワタシにすっと手を伸ばし頬に触れました。



「俺がヒロくんに触れるのはな、ただヒロくんのことが好きだからじゃ」



仁王くんはそう言って、さもそれが当然であるかのようにワタシの唇にキスを落としました。

仁王君からのキスはいつも私を心地よくしてくれます。

触れられる度に頭の芯がぼんやりとする感じがするのです。

だからいけないとは思いながらも彼を強く拒むことが出来ません。



ワタシには紳士という呼び名がつけられています。

しかしワタシは紳士と呼ばれるようなことを常にしている訳ではありません。

部員、特に真田君辺りにばれれば唯では済まないようなことをしています。

しかしそれを悪いことだとは既に思えなくなってきていて、

確実に彼の熱がワタシの胎内に浸透してきているのでしょう。

逃れられないという、体を縛り付けられるような思いを感じながら、

それを酷く心地よいと感じている自分がいるのです。



仁王君はよくワタシの唇を舌先で舐めます。

それから噛み付かんばかりに息もつけないほどのキスをくれます。

世の中には沢山の人がいるのに、ワタシはこんなに深い愛を貰えて幸せですと仁王君に告げたら、

ぎゅっと抱きしめてくれました。

ワタシは声に出しては言わないけれど仁王君にこうしてもらうのがとても好きなのです。


仁王君の熱を感じながら、ワタシは二人でいることの幸せを強く感じました。



「それは俺の台詞じゃ。

 ヒロくんが一緒におってくれることが俺は何よりも幸せじゃけんのう」



そう告げられて、ワタシは体の中から熱が上がってくるのを止めることができませんでした。

かぁっと頬に熱が広がるのが分かり、思わず自分の頬を手で押さえました。


そうして、好きだからキスをしたいという仁王くんの気持ちを、

ようやく理解することができたのです。

ワタシは恐る恐る目の前の仁王君の唇に自分のそれを寄せました。

初めてのことだったので上手くできたかどうか心配でしたが、

それでも自分の気持ちはちゃんと込めたつもりです。



「やっぱり、ワタシの方が幸せです」



少しだけ笑顔を乗せて言えば、強く体を抱き締められながら、

息も継げないようなキスが降って来ました。




ワタシはこのキスの意味を知っています。




今日は家に帰れなくなるかもしれません、と思いながら、

ワタシは仁王くんの熱に身を委ねたのです。