ワタシたちはよくお昼休みに集まっては、色々なことをして遊んでいます。 +looking for you+ それはいつから始まったことなのか正確には覚えていないのですけれども、 思い出せないくらい昔から私たちはこうして昼休みに集まっては何かしらで遊んでいました。 『こういうことが全国制覇に繋がるんだよ』 という幸村君の言葉を信じて、遊び続け、その言葉通りに全国制覇に至ったのですから、 こうして昼休みに遊ぶことも、まんざら無駄なことだとは言えないのです。 日々行われる種目は幸村君の気分と独断で決まります。 そういうことに滅多に参加しないのは真田君で、 最近よくこの遊びに加わってくるのは2年生エースの切原くんです。 今日の種目はケイドロでした。 その時点でワタシは少々気が重かったのですが、 グループ分けでワタシが泥棒のチームだと分かり、 そして仁王君が警察のチームだと分かったときにはワタシの気分は下方を漂っていました。 何故ならワタシが泥棒のとき、無事に任務を遂行できた試しがなかったからです。 例えどんなに考えて警察の陣地に行こうとしても、途中で仁王君に必ず見つかってしまうのです。 一度ワタシは誰にも見つからないだろうと思った隠れ場所を見つけたことがあります。 けれどその場所もすぐに仁王君に見つけられてしまいました。 だからワタシいつもケイドロで泥棒をするときには気が重いのです。 今日も幸村君の合図でケイドロが始まりました。 ワタシと、丸井君と、幸村君と、切原君が泥棒で、 珍しく参加した真田君と、柳君と、桑原君と、そして仁王君が警察です。 今日は相手方にうちの部の参謀がいるのでいい戦いになりそうです。 警察の陣地はテニス部室の前でそこには真田君が腕を組んで仁王立ちしています。 その横には何か作戦を立てているのだろう柳君の姿があります。 どうやら実働部隊は桑原君と仁王君のようです。 それを知った私は部室から少し離れた体育倉庫の裏へ息を潜めました。 今日こそは仁王君に捕まらないようにしなくてはという目標を立て、今後の作戦を考えました。 確かに向こうは真田君と柳君のコンビがいますが、こちらには丸井君と幸村君のコンビがいます。 この二人のコンビも超一級です。 きっと二人で作戦を立て、もう既に動き出していることでしょう。 ワタシは一つ決意の溜息をつきました。 いつまでもこうしている訳にもいかないので、 ワタシは倉庫の影から辺りを見渡しました。 近くに仁王君や桑原君の存在がないか確認するためです。 しかしワタシはその時背後から忍び寄る存在に気付くことが出来ませんでした。 意を決して飛び出そうとしたとき、覚えのある腕が私の体を抱きしめました。 「ヒロくん捕まえた」 ぎゅっと体ごと抱きしめるように捕まえられました。 耳元で囁かれたのはワタシの大好きな甘い声。 そしてワタシは仁王君に正面を向かされて、唇に柔らかいキスを落とされます。 それがいつもワタシが仁王君に捕まるときの儀式のようなものなのです。 仁王君に抱きしめられてキスをされることは決して嫌なことではありませんが、 ゲームとしていつもこう簡単に捕まってしまうことに対しては気分が晴れませんでした。 仁王君に抱き着きながら、ワタシは尋ねました。 「仁王君はどうしていつもワタシを見つけられるのですか?」 すると仁王君は嬉しそうに笑いました。 「ヒロくんが俺の知らないとこで一人でおるっちゅーのが心配でたまらんのじゃ。 誰か他の奴に捕まったりせえへんか、とか襲われたりしてへんか、とかな。 だから俺は必死で毎回ヒロくんのこと探すんじゃ。 俺がヒロくんのことをすぐ見つけられるのは愛の力っていうのが一番相応しいかのう」 そうして息も継げないほどのキスをくれました。 唇を割られて舌を絡めとられるようなキスをされて、 立っていられなくなれば仁王君が後ろから支えてくれました。 「それとな、ケイドロだと捕まえたヒロくんを警察の陣地に置いとくことができるじゃろ? 他の奴が助けに来たらヒロくんは逃げてしまうから必死で泥棒を捕まえようと思うんじゃ」 そういいながら仁王君はワタシを警察の陣地に連れていき、柳君と真田君にワタシを託しました。 そうして仁王君は再び残りの泥棒を捕まえるために陣地の外に向かって行こうとします。 それが少しだけ淋しくて瞳を曇らせれば、気付いた仁王君がワタシの頬に触れ、 ちゅっと軽いキスをくれました。 それを見ていた真田君は固まったようですがワタシたちはそれに気付きもしませんでした。 「捕まえてすぐ戻ってくるけん、ええ子で待ってんしゃい」 そう言って仁王君は颯爽と去っていきました。 敵ながらも、仁王君に早く泥棒を捕まえて帰ってきてほしいと思ったのは 幸村君と丸井君には内緒です。 ちなみに結果は仁王君の活躍により警察の勝ちとなりました。 賞品がワタシだったということは言うまでもありません。 |