止まらなかったのはキスだけではなかった。 +愛情、黒須幼稚園 3.5 路上でキスを交わした後、結局二人で夕食をとっていたレストランのあるホテルへと舞い戻った。 取ったのはツインの部屋。 自分がどんな顔をしてホテルのフロントに向かったのかは覚えていない。 頭の中は彼のことだけでいっぱいで。 もう他の何も不破の思考に入り込む余地はなかった。 鍵を貰って二人でエレベーターに乗り込む。 すぐ側にいる佐藤の熱に誘われるかのように、思わず手を伸ばしそうになる。 けれども他の乗客のために、手を伸ばすことは許されない。 思わず触れそうになる心を必死で抑える。 彼の表情を少しでも見てしまえば、彼の熱に少しでも触れてしまえば 止まらないことは分かっていたので、 必死で心を抑えて佐藤を意識しすぎないようにした。 しかしその努力も必要はなくなる。 取れた部屋は20階であるのだが、乗客は8階までで全て降りた。 気がつくと狭い空間に二人きりで、もう抑えることなどできなかった。 すぐ隣にいる佐藤の表情を覗けば、僅かに目元が赤い。 佐藤の腕に触れて不破の腕の中に引き込む。 触れてしまえばもう止まることがなかった。 抱き込んだ佐藤の腰を引き寄せる。 すると不破が口付ける前に佐藤の方から口づけてきて、ほんの短い間、 20階でエレベーターが止まるまで、息が上がるほど口づけあった。 佐藤の腕を引きながら部屋へと向かう。 カードキーを差しこみ、ドアを開ける間さえもどかしく。 ドアを開けてライトをつける間もなく、佐藤を抱き締めた。 もう二人を邪魔するものは何もなく、気が済むまで二人で抱き締めあう。 不破の腕が佐藤に回り、佐藤の腕が不破の背に回される。 佐藤の頬が肩に寄せられ、愛する彼が本当に近くにいることを実感する。 初めて佐藤を手に入れたことを実感して、不破は今まで彼に告げていなかった言葉を告げる。 「好きだ・・」 そう耳元で告げれば、佐藤は顔を上げて僅かに口を尖らせる。 先ほどから頬は絶えず赤みを帯びている。 熱を有する佐藤の体からは、甘い香りを感じる。 目の前にある白い首筋に思わず噛み付いてしまいたいほど。 自分の中にこんな欲があるとは思わなかった。 今まで誰にも感じたことのない、欲。 それはただ一人、目の前にいるこの人物だけに向けられるものだ。 腕の中にあってもその欲は止まることはない。 佐藤を食い尽くしてしまいたくて仕方がなかった。 「恥ずかしい奴やな・・」 佐藤が僅かに背伸びをしてそう呟く。 それから不破の頬に口づけて、不破の発情を促す。 けれども佐藤はその不遜な唇を軽く手で遮って、悪戯そうに笑う。 「でも・・ 俺もセンセのこと好きやで」 背伸びをして、耳元でそう告げられて。 耳に僅かに感じた熱に、舐められたのだと理解した途端。 止まらなかった。 お前の熱は発情のきっかけ。 ふとしたことで火をつけられる。 抱きかかえるように佐藤をベッドへと運ぶ。 整えられていた真っ白なシーツに波が浮かぶ。 暗闇の中、電気は点けず、窓から差し込むビル群の光だけで佐藤を視覚に捉える。 ベッドに乗せられた佐藤は不破へと真っ直ぐに視線を向ける。 その視線に誘われるように、不破は佐藤の白い肌へと手を伸ばした。 一枚一枚服を脱がしていくたびに心が震える。 露になる肌に噛み付くように口付ける。 白い肌に赤い花が点々と咲き、その花は甘い芳香を放っているかのようだった。 誘われるように白い肌に手を伸ばし、佐藤の全てに触れていく。 柔らかい腕の内側の皮膚をなぞると佐藤の体が小さく震えた。 ここが感じるのかと唇を寄せて強く吸い上げると、佐藤は声を上げて鳴いた。 あまりに色を含んだ声に、不破は眩暈がするほどの欲を感じる。 佐藤の足を割り中心部に腰を押し付ける。 反応を始めた佐藤のそれに満足をしながら、深く佐藤に口付ける。 溶け合うかと思うほどに、貪るように口づけあってから、不破は唇を次第に下へと移動させる。 首筋を伝ってキスを施して、胸の飾りを弄ぶように弄り、敏感な臍の周りに舌を這わせる。 そうして、それから既に反応しきっている佐藤の中心に唇を寄せた。 すると佐藤の体が大きく震えた。 「あかん・・不破・・!」 静止する声に聞く耳は持たず、中心を口に含み、それから根元から舐め上げる。 佐藤は快楽に慣れていないのか、懸命に首を振って逃げようとする。 けれども片手で腰を押さえ、そうして先端に口付ければ佐藤の体が快楽に震えた。 手で何度か扱いてやり、それから先端の割れ目に指を這わせると、 佐藤は小刻みに震え、そして小さな悲鳴のような喘ぎ声を上げながら不破の手の中で果てた。 その様を眺めていて、あまりの綺麗さに不破は震えた。 この綺麗な生き物が自分のものになるのかと思ったら、佐藤を気遣う余裕もなくなった。 そのまま佐藤の放ったもので濡れた手を後ろへと滑らせる。 入り口付近を擽るように触れると佐藤が身を捩る。 しかし不破は躊躇うことなくそのまま指を一本佐藤の中に入れる。 初めてのことに佐藤は僅かに表情を顰めたが、静止の声は上げなかった。 ただ、ひたすら。 不破に手を伸ばしてその熱を求めようとする。 そんな佐藤に口づけながら、足を大きく開かせ、更に指を内部まで侵入させた。 口腔を蹂躙する舌の動きと連動させるように、佐藤の胎内で指を動かす。 先ほど放ったばかりの中心が熱を取り戻し、 不破の指がある一点を抉ると佐藤の体が今までないほど大きく震えた。 「あ、不破・・そこ、やめ・・」 「ここがいいのか?」 何度もそこを抉ってやると佐藤の体が小刻みに震え出す。 指の本数を増やして中を掻き回していると、 次第に佐藤の内部が不破の指に食いつくように揺れてきた。 締め付けられるような感覚に不破の中心も酷く強い熱を感じ始める。 目の前の上気した肌は不破を誘い、指で感じる佐藤の内部の心地よさを、 早く自身で感じてみたくてたまらなくなる。 すると蕩けたような瞳をしている佐藤と視線が合った。 思わず食べてしまいたいほど綺麗なその瞳に、不破は息を飲む。 「ふ、わ」 掠れた、けれども酷く色のある鮮やかな声で誘われる。 「もう・・ええから。 大丈夫、やから」 早く来て。 その言葉に不破は佐藤に深い口づけを落とすと、指を引き抜き、佐藤の中に自身を押し進めた。 断続的に上がる、佐藤の上ずった声。 そんな声も不破を刺激して、更に意識を佐藤の内部へと向かわせた。 無意識でずり上がろうとする佐藤の腰を押さえて、足をいっぱいに開かせる。 自身を全て中に入れると、不破は僅かに息を吐いた。 「・・大丈夫か?」 不破の下、荒い息を吐く佐藤の頬に手を当てる。 すると辛いはずの佐藤は僅かに笑顔を見せて、そうして不破の頭を撫でた。 「・・俺は・・大丈夫やから、・・動いてええよ」 きっと不破のことを抱きしめたかったのだろう腕が空を切る。 それを合図に不破は佐藤に深く口付ける。 そして同時に、佐藤の内部に埋まる自身の律動を開始した。 先ほど見つけた佐藤の感じるポイントを執拗に攻めれば、佐藤が小さな泣き声を上げる。 その声に促されるように体を進めていけば、佐藤の体が小刻みに震えた。 僅かに引き抜こうと体を離そうとすれば、絡みつくように佐藤の内部が吸い付いてくる。 その感覚に思わず達しそうになるのを必死で堪え、再び佐藤の最奥へと体を進める。 「・・!あ・・アカン不破、もう・・」 震える声でそう告げられて、不破も頷く。 もう限界だった。 最後に深く深く口づけると佐藤の体がびくりと大きく跳ねた。 それに合わせて内部がきつく締まる。 佐藤が放つのに僅かに遅れて、不破も佐藤の内部で達した。 行為の後は酷くゆるやかな時間だった。 今まで感じたことのない穏やかさと優しさを、佐藤といるときには感じることができる。 不破の腕の中にいる佐藤は、安らかに目を閉じ体を預けている。 そんな佐藤がとても愛しくて、僅かに力を込めて抱き締めれば、 目を閉じていた佐藤が目を開きこちらを向いて、そうして誰よりも綺麗な笑顔で笑った。 「・・あったかいなぁ センセの腕の中、安心する。 だから子供たちもセンセのこと好きなんやろうなぁ」 そう言う佐藤に、堪らなくなって口付ける。 再び湧き上がってくる熱を体の内に感じながら告げずにはいられなかった言葉を口にする。 「佐藤・・ 俺はお前がこの腕の中にいることが何よりも幸せだ」 数学で証明できないことは、好きではないのだけれども。 佐藤に会えたこと、それは、紛れもない奇跡だと思う。 「せやな、感謝しいや?」 悪戯そうに笑う佐藤につられて自分も滅多に出ない笑みが零れて、 幸せを乗せたキスを佐藤に落とした。 |