5月5日は全国的にお休みの日だ。

実はその日、俺の誕生日なんだけど、でも『国民の祝日』だから学校はお休みで。

だから俺は学校でみんなに、誕生日当日に『おめでとう』って言ってもらったことがない。

いつもいつもゴールデンウィークが始まる前に、みんなが学校でお祝いの言葉を言ってくれる。

早いおめでとうの言葉に、中々実感は沸かないけれど、

それでも俺の誕生日を祝ってくれるのはとっても嬉しい。

ちゃんと覚えてくれてること、愛されてるんだってすごくすごく伝わってくる。

みんな、有難うって思うんだけど。

思うんだけど。

俺の誕生日は5月5日。

こどもの日。

だから、しょうがないかもしれないんだけど。


いつまでもみんな、俺のことは子供あつかいのままだ。





+大人になる日





岳人がくれたのはふわふわのまくら。

亮ちゃんがくれたのは、羊柄のパジャマ。

そして忍足なんてミニこいのぼりをくれた。(ちょっとひどい)

俺がそういうの大好きだから、みんなそういうものをくれるんだっていうのは分かる。

(忍足は例外)

でも、俺だって子供のままじゃない。

みんなが思うほど、俺は子供じゃないよ。

(自分で言ったら説得力はないんだけど)


だって、子供のままじゃ置いていかれてしまうから。

誰よりもかっこよく強い跡部に。

置いていかれてしまうのは嫌だよ。





今日は5月5日、誕生日当日。

何故か毎年、俺の誕生日には部活はなくって、(多分跡部の差し金なんだろうけど)

俺はゆっくりお昼過ぎまで眠っていた。

窓越しに高く昇ったおひさまを見て、その明るさに自然と笑顔がこぼれる。

それからゆっくりベッドから起き上がって、リビングに行くとそこには誰もいなかった。

みんな、出かけたのな?

昨日は誰も、出かけるなんてこと言っていなかったのに。

俺はちょっと不思議に思いながらキッチンに向かう。

だけどすぐにまぁいいか、って思いなおした。

俺が言うのも何だけど、俺の家族は俺に似て、気まぐれだからふらりと何処かへ行ったりするんだ。



それから冷蔵庫を開けてコップに牛乳を注いで飲んでいると、不意に。

玄関のチャイムが鳴った。


俺は一回自分の格好を見て、どうしようかと悩んだ。

(だって俺はパジャマのままだったんだ)

だけど家には俺しかいなかったし、別に男の子だから恥ずかしくないや、と俺は玄関へと向かった。



『はーい』



インターフォン越しに答えれば、聞こえてきたのは聞きなれた、誰もがメロメロになりそうないい声だった。



『俺だ』



俺はその声にびっくりしてしまう。

だって跡部が俺の家に来るときなんて、いつも俺の部屋の窓から勝手に入ってくるのに。

どうして今日に限って玄関からちゃんと入ってこようなんておもったんだろう?

それから俺は、今の自分の格好を思い出して更にあわてる。

だって俺は今パジャマ・・!!



「あのね、跡部、三分待って・・!!」



俺は事情も言わず、跡部にそう告げると慌てて部屋へと戻った。

それからクローゼットを開けて、一番近くに掛かっていたお気に入りの服を着る。

そうしてまた慌てて玄関に戻り、ドアの前に立つ。


ニ、三回深呼吸をしてから、ゆっくりとドアを開ける。

怒ってるかな、なんてちょっとどきどきしながらドアを開けたけど、

俺はその向こうにあった光景に驚いて声も出なかった。



跡部は、かっこいいスーツ姿で、それから手には大きな大きな薔薇の花束を持っていたんだ。



跡部は俺と視線を合わせて、それからゆっくりと俺の前に跪いた。

それから俺の左手を取って、その薬指に柔らかいキスを落とす。



「・・ジロー、お前が生まれてきてくれたことに心から感謝する」



その言葉を聞いて、俺は思わず泣きそうになった。

だって、本当に。

嬉しかったんだ。


ちょっぴり視界の霞んだ俺を、跡部は優しく抱き締めてくれる。

そんな跡部に、俺はぎゅっと抱きついた。

薔薇の花の香りがふわりと鼻につく。


もう子供の頃から跡部が、何度も俺の誕生日を祝ってくれたんだけど。

跡部は俺のこと、いつだって子供あつかいなんてしなかった。

ちゃんと対等な目線で話してくれる、一人で先に行こうとなんてしないで必ず俺に手を伸ばしてくれる、

それがとってもとっても嬉しいことなんだ。



「・・有難う、跡部」



「プレゼント、気に入ったか?」



「うん、もちろん!」



そう答えると、なぜか跡部は不敵な笑みを浮かべて、そうして耳元にくちびるを近づけた。



「まだまだこれから、だぜ?」



腰がくだけそうな声でそう言われて、俺は玄関の中に引き込まれた。



「わっ・・!?」



ぱたんとドアが閉まる音と同時に、唇に柔らかい熱が舞い降りる。

深く深くくちづけられて、呼吸ができなくなりそうな頃、やっと放されて、それから。


跡部の全てで俺の全部を愛された。







今日は5月5日こどもの日。

そんな日の昼間から、俺たちは子供たちもびっくりな大人の恋愛をしているのだ。