運命って、信じる?





+運命





例えば、ある晴れた日の昼下がりの出来事。



「ねぇねぇ、手塚!乾!

 あの雲、超変な形してない?」



なんの形に見えるかにゃ?



と、無二の親友が尋ねてくる。

ぼんやりと青い空に浮かんだ、細長い真っ白な雲を見上げて、こう答えた。



「「サンマ」」



答えが紡がれたのはほぼ同時だった。

手塚と乾は思わず視線を合わせて・・笑った。



「あー!

 なんか二人だけの世界に入ってるにゃ!」



菊丸に指摘されながらも、お互い。

何だか笑えて笑えて仕方がなかった。



















貴方は運命というものを、信じますか?




















そうして同じく、とある日の昼下がり。

久し振りに生徒会もないお昼休みに、手塚はある確信を抱きながら屋上に向かう。

普段は屋上で昼ごはんなど食べない乾なのだが、今日は必ず、そこにいるような気がするのだ。

別に確たる証拠もなければ、乾からそう聞いていたわけではない。


ただ、そう心が告げるのだ。




普段はあまり使われない屋上への階段を抜けて、真っ青な空の下、ドアを開けて屋上へと出る。

するとそこには、自分が待ち望んでいた人間がいた。



「やぁ、手塚」




今日は来ると思ってたんだ。




乾も、同じことを感じてくれていたのだろうか。

手塚は思わず嬉しくなって、乾の元に小走りで駆け寄る。



「おいで、手塚」



伸ばされた手は手塚が心底焦がれて、待ち望んでいたもので、

何の代償もなく伸ばされる腕に、心が震える。


腕の中に飛び込んで、ぎゅっと乾を抱き締めれば、顔を埋めた制服から、お日様の匂いがした。

愛しさで胸がいっぱいになって、どうしようもなくなる。

抱き締め返される熱に泣きそうになる。


ぎゅっと乾に抱きついて、そうして溜息を一つつく。

呼吸を整えて落ち着いてから、僅かに口を開いた。



「なぁ、乾」




運命って信じるか?







そう問うと乾は、眼鏡越しに目を細めて笑った。























「手塚に出会えたことが、俺にとっての運命だよ」




















運命を、信じますか?

自分は信じています。

全てを受け入れて愛してくれる存在を知っています。



ただ一人の大切な人に出会えたことが、自分にとっての運命なのです。