+恋の賭け、愛の罠。 いつもより早く学校に来てしまったから。 理由はただそれだけ。 朝練に出るにはまだ時間があるから、ふらふらっと校内を歩いていたらふと思いついたんだ。 思いついたときはあまりにも子供っぽくって笑っちゃったけど。 なぜか俺はそれを実行しようと思ったんだ。 気がついてくれる確率は5割くらい。 三井が授業中寝てたりしたら絶対に気がついてもらえない。 それでも、なんだか三井ならって気がして、俺はその行動へ移った。 三井の教室。 居ちゃいけないような雰囲気のするそこに俺はそっと入っていった。 朝早い時間だったからまだクラスの人は来てないみたいだった。 俺は急いで三井の机に向かうと、悪戯を施した。 よし、と。 気がついてくれるように少しだけ祈ってみせて。 でもなんだか気がついてほしくないような恥ずかしさもあって。 だけどわくわくするような昂揚感を覚えながら俺は教室を出ていった。 さあ、三井は気がついてくれるかな・・? ☆★★★☆ あーねみー。 こんな授業なんか聞いてられっかよ。 わかんねーっつーの。 今まで遊んでて真面目に授業なんて聞いたことなかったのによー。 俺が起きてるだけでも感謝してほしいくらいだぜ。 朝の練習は大会前というだけあって、気合が入って更にハードだ。 懸命に体を動かした後に授業っていうもんがあるのがおかしいんだ。 バスケやらせろ、ちくしょー。 それでも偉い俺はのそのそと机の中からルーズリーフを取り出した。 バスケをするためには勉強をしなくてはならない。 なんせ赤点を何個かとったら大会に出られないんだと。 あほらし。 バスケやってんのに勉強しなきゃ駄目なんてどういう理屈だ? まあ高校の部活動なんだからしょうがないっていったらしょうがないんだろうけど。 俺はまた鈍い動きでまだ見た目新しい数学の教科書に手を伸ばした。 数学なんて訳分からないの根源みたいなものだ。 黒板に書かれてる数式なんて眠気を誘う以外の何物でもない。 教科書を開いたところで瞼がゆっくりと落ちてくる。 くそ、眠い。 寝てやろうかと思ったけど、ふと聞こえてきた教師の口にした言葉が、この前木暮に教えてもらった数式だと分かると、少しだけやる気が出た。 教科書を少しだけ読んで、なんとなく分かった解き方に満足してみる。 やればできんじゃん、俺。 ルーズリーフに答えを書き写して、そう、そこを見たのはほんの偶然。 普段なら見もしない机の上。 そこに鉛筆で何か書いてあるような気がして俺は顔を近づけてそれを見た。 「・・・・・!!」 あまりの驚きで机ごとひっくり返ってしまうところだった。 しかし授業中に椅子から落ちたなんてことが木暮の耳まで届いたら、なんてことがふと頭によぎって、俺は懸命に耐えた。 周りが俺の行動に不審な目を向ける。 しかしさっと周りを睨むと、何事もなかったかのように皆黒板に目を向けた。 俺は一つ大きく深呼吸をして、もう一度その文字に目をやった。 そこには『三井、愛してる』という言葉と、その言葉の終わりにバスケ部のユニフォームが書かれていた。 そのユニフォームの番号は、三井の着ている『14』ではなく、『5』・・。 「あの馬鹿・・」 俺はそう言いながらも顔は笑っていた。 もう勉強どころじゃない。 こんなのいつ書いたのか。 全く・・。 呆れつつも嬉しい気持ちを抑えられなくて、俺はその書き込みの隣に、自分で大きく文字を書いた。 『俺も愛してる』} もちろん、言葉の最後に『14』番のユニフォームを書き込むことを忘れずに。 あいつがこれを見たらなんて言うだろう。 自分でこういう悪戯したくせに、どーせ真っ赤になって机の前で立ってるんだろうな。 愛してるなんて書くだけじゃ、この想いは収まりそうにない。 だから、取り合えず次の休み時間にあいつの教室に行って、ありったけの想いをぶつけてこようか。 やっぱり、あいつの恥ずかしがる顔が見たいからさ。 |