好きなもの。






テニス。






ファンタ。






カルピンにお風呂。














+ソーダアイス+
















お風呂から上がって、部屋へと帰る。

階段を上りかけて、ふとその足を止めた。

振り返って、台所へ視線を向けて。

そうして向かう方向を台所へと変えた。

タオルを頭にかぶったまま、冷凍庫の中を覗く。

中にあったのは、ソーダのアイス。

少しだけ背伸びをしないと、上にあるそれを手にすることはできない。

しかし。

みっともなく背伸びをするのは悔しくて。

懸命に手を伸ばしてそれを取った。

袋を破って棒つきのアイスを口に含む。

口の中にはじわりとハッカの味が広がった。

それに少しだけ満足をして。

再び自分の部屋へと向かった。

風呂上りの体はひどく熱く。

おざなりに着ていた少し大きめのTシャツの袖を肩まで捲くった。

拭ききれなかった髪から雫が垂れて、リョーマの首筋をつうっと辿る。

青い色をしたソーダアイスをサクリと齧る。

歯に触れる氷の感触が心地よい。

その冷たさに暑さが遠のいていく気がした。

リョーマは頬を伝う雫を、かぶっていたタオルで軽く拭き、自分の部屋へと入っていった。





「おう、越前」


部屋では桃城がどこか暇そうにテニス雑誌を読んでいた。

重い音をたててゆったりと首を振る扇風機の前で、桃城は寝転んでいる。

扇風機の首がこちらを向くたびに越前の肌を撫でていく。


「ん」


桃城に軽く返事をする。

先輩後輩という間柄だといえ、今更そんなことを気にするような仲ではない。

リョーマは片手でタオルを掴み、頭を拭きながら桃城の横に腰を下ろした。

目の前では水色の羽根を持った扇風機がやはりゆったりと風を送っていた。

顔にその風を受けて、その気持ちよさにリョーマは目を瞑る。

そしてまた、サクリとアイスを頬張った。


「しかしあっちいなー」


桃城が首元のTシャツを掴み、空気を流し込むような仕草をする。

思わずその首元に目がいってしまったリョーマは、

僅かに罪悪感に駆られるように目を逸らした。


「ん、どうした、越前?」


突然目を逸らしたリョーマを不思議に思ったのか、桃城がたずねてくる。


「別に」


しかし貴方に見とれていたとも言う訳にもいかず。

適当に答えを口にしたリョーマは、その場を繋ぐかのように再びアイスを口にした。

爽やかな、どこか甘酸っぱい味がリョーマを包む。


「お前、さっきからいいもん食ってんじゃん」


桃城は満面の笑みをリョーマに向ける。

それをまた直視できずに、リョーマは僅かに視線を逸らす。


「あげない」


素直に桃城に差し出すこともできず、リョーマは意地になったようにアイスを口に運ぶ。

けれど。

予期しない出来事がリョーマを襲う。

リョーマが口に含んだアイスの下の方を、桃城が横から食べた。

それは一瞬のできごとで。

あまりの鮮やかさにただただ目を瞠った。

触れるか触れないかのところまで近づいた、桃城の唇。

一番近いところで桃城と目が合った。

アイスを銜えた桃城は酷く楽しそうで。

熱の篭った桃城の視線に体が疼いた。

アイスを奪った桃城は満足そうにリョーマの目の前で笑った。


「サンキュー、越前」


少し呆然としていたリョーマは、突然の襲った感覚に思わず声を上げた。


「・・冷たっ・・」


触れた感触に目をやれば、持っていたアイスが溶け出して、リョーマの腕を伝っていた。

溶け出すアイスに驚いて、慌ててその雫を舌でなぞる。

アイスについていた雫も舐め取ると、強い視線が自分に向けられていることに気がついた。

ふと顔を上げると、桃城がこちらを強い視線で見つめている。

視線が絡まり、桃城の顔が再び近づいてくる。

リョーマがゆっくりと目を閉じると、唇に柔らかい熱が触れた。

穏やかだと思ったのはそこまでで、不意に嵐のような熱が襲ってくる。

強く唇を奪われて、呼吸すらままならない。


「んっんっ・・・!」


熱が体の中に篭りだして、頭が働かなくなってくる。

遠くで扇風機の重く動く音が聞こえる。

やっと開放されて、リョーマは荒い呼吸を続ける。

桃城の手が頬に触れ、そうしてゆっくりと離れた。

触れられた頬が熱い。

熱が篭っていて、今にもそれをどこかへやってしまいたいはずなのに。

どうしてだろう。

頬に触れる扇風機の冷たい人口の風が、少しだけ嫌だと思った。

きっと、焼けるような熱を持つ桃城に、抱きしめてほしいのだと。

そう思っているのであろう自分はもうどこか壊れてしまっているのであろう。


桃城が越前の手にしているアイスを口にする。

再び近づいてきた桃城に、越前は思わず体を震わせた。

桃城が口を離すと、溶け出したアイスが越前の足へとたれる。


「・・・っ!」


越前が自分の足へ目を向けると、桃城もそれに目をやって、

そうして楽しげにリョーマの瞳を覗き込んだ。


「んっ・・!やだ桃先輩!」


桃城の顔がリョーマの足へと埋められる。

腿の内側に桃城の呼吸を感じて、体がびくんと震えた。

桃城が顔を上げて、越前を見つめる。

そうして桃城は自分の唇をゆっくりと舐めた。





「欲情、した?」





リョーマを惑わすその笑顔は、やっぱり曲者だと思った。










































好きなもの。




テニス。




ファンタ。




カルピンにお風呂。




そして。








桃先輩。