もしかしたら近いうちに。

あいつに酷いことをしてしまうかもしれない。





+夢想青春





それほど、切羽詰まっているのだ。

自分は。

長い間好きだった人間が、今自分の側に。

それだけでも奇跡に近いことであるが、けれどもそんな彼が、

同じ教室、同じ部活の友人ということで、自分に無防備な姿を見せてくれる。


その度に、そんなに安心しきった顔をするなと言いたくなる。

友達の顔をした裏で、自分は毎日、毎日。



お前を掻き抱くことだけを考えているのだから。



何度その首筋に噛み付いてやろうかと思ったことだろう。

その細い腰に手を回して、抱き締めて、滅茶苦茶にキスをして。

大きく足を開かせて、自分の猛ったモノを、彼の中に。


幼い頃は、一枚だけ隠れて撮影した、彼の写真で自分を慰めた。

彼は一体どんな声で鳴くのだろう、だとか、中はどんなに柔らかいのだろう、だとか、

自慰に耽る度に彼の淫らな姿を想像しては劣情を吐き出した。


だから本物が目の前に驚いた時には酷く驚いた。

そして何度も何度も頭の中で汚して申し訳ないという罪悪感も生まれた。


けれども、それよりも何よりも。

彼を手に入れようと、そのことだけを強く決意したのだ。

どんな手を使ってもいい。

彼の ―蓮二の― 側にいることができるようになるのであれば、どんな手段を使ってもいいと考えた。


そうして蓮二は、友人である自分に酷く無防備な顔を見せるようになった。

警戒心の強い蓮二がふと見せる笑顔。

それが何よりの証拠で、自分に心を開いてくれたことを知る。



けれど、もしかしたらそんな風に苦労をして培った信頼も、壊してしまう日が来るかもしれない。



友人、という立場だからこそ、日常生活で蓮二の色々な姿を見る。

例えば、彼が部室で着替えている姿。

部活後の上気した肌を、彼は惜しみなく目の前に晒す。

もちろん男同士なのだし、隠す必要はないのだが、

それが他人の目にも晒されているのだと思うと酷く腹が立ち、

そしてその度に蓮二を自分だけのものにしてしまいたいと思うのだ。

蓮二の白い肌を目で追い、そのままその肌に口づけたいと思ったことは、両手で数え切れない。


また、蓮二は自分の前で無防備に寝顔を晒す。

人気のない教室で。部活後の部室で。帰りの電車の中で。

自分が何度理性を飛ばしかけたか、蓮二は知る由もないのだろう。



真田は今日も、自分の部屋であの頃の蓮二の写真、

そうして最近手に入れた今の蓮二の写真を布団の上に置く。

あの頃は想像でしかなかったが、今は生の蓮二を想像して自慰に耽る。

蓮二の笑顔、蓮二の声、蓮二の熱。

全てを思い出し、自分を慰めるのだ。


真田は熱を持ちはじめた中心に手を這わす。

そうして何度も扱き始める。


「・・蓮二」


目を閉じて瞼の裏に蓮二の姿を思い浮かべる。

部活後の上気した肌の蓮二が、そのまま真田に迫ってくる。

部室には誰もいない。

おあつらえ向きだ。


そのまま真田は手を伸ばし、下着とハーフパンツを脱ぎ取る。

そうして生まれたままの姿になった蓮二を堪能する。

舌を這わせ、指を滑らせ、息が告げなくなるほどキスをして、更に火照った蓮二の肌を楽しむ。

立ち上がり始めた乳首を飽きるほど吸い、後ろに手を伸ばす。

真田が少し指先を入れただけで吸い付くそこは、焼けるように熱い。

二、三本指を入れてかき回し、狭いそこを広げて、

そうして猛る己自身を突きたてた。

蓮二の口から、吐息が漏れる。

真田はもっと喘がせたくて、更に動きを早くする。

すると蓮二はしがみつくように、真田に腕を回した。

それに答えるように、真田は蓮二のいいところを何度も擦りつける。

蓮二の中は酷く暖かくて、自分を包み込んでくれるようだった。

ずっとこの中にいたい、と己の熱を叩きつけていると、

蓮二が真田の耳に唇を近づけた。


 『・・もう・・駄目・・だ、弦一郎・・。

  イかせ・・、て』


涙目の蓮二に懇願されて、真田の体積がぐっと増す。

そうして蓮二の奥を数回突くと、蓮二は小さな悲鳴を上げながら果てた。

真田もそのきつい締め付けを感じながら、愛する蓮二の中で全てを放ったのだ。



真田はゆっくりと瞼を開けた。

そこには、もう蓮二の姿はなかった。

残ったのは、虚しさと自分で吐き出した劣情だけであった。



「蓮二・・・」



毎晩、毎晩、彼を思って自分を慰める。

その頻度がもう、極限まできている。



もう、自分は限界だ。





次に、蓮二の無防備な姿を見たとき。

自分は今まで培ってきた全てを捨てて、彼を掻き抱いてしまうに違いない。



「蓮二・・」



小さく熱に潤んだ声は、夜の闇へと溶けていった。